言志録2条より
太上は天を師とし、其の次は人を師とし、
其の次は経を師とす。
最
上の人は「天地自然」を師と仰ぎ、その次は「尊敬する人」を師と仰ぎ、
更にその次は「教え」そのものを師とする。
さて我々は果たしてどんな師を持っているのだろう。
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言志録3条より
凡そ事を作すは、須らく天に事ふるの心有るを要すべし。
人に示すの念有るを要せず。
全ての事業を行うには、必ず天の意志に従う心を持つべきである。
他人に誇示する気持があってはならない。
共感度:B / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録5条より
憤の一字は、是れ進学の機関なり。
舜何人ぞや、予何人ぞやとは、方に是れ憤なり。
憤の一字が学問を進展させる力である。
孔子の弟子の顔淵(舜)も同じ人間ではないかという言葉はまさに憤である。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録6条より
学は立志より要なるは莫し。
而して立志も亦之れを強うるに非らず。
只だ本心の好む所に従うのみ。
学問の行うには志を立てるより大事なものはない。
しかし立志は強制してはいけない。
本人の赴く所に従うべきである。
西郷南洲遺訓第36条より
聖賢に成らんと、
欲する志無く、
古人の
事跡を見、
迚も、企て及ばぬと、
云ふ様なる心ならば、戦に臨みて、逃るより
猶卑怯なり。
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言志録7条より
立志の功は、恥を知るを以て要と為す。
志を立てて成功するには恥を知ることが肝要である。
言志耊録23条参照
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言志録10条より
人は須らく自ら省察すべし。
「天は何の故に我が身を生み出し、我をして果たして何の用に供せしむる。
我既に天物なれば、必ず天役あり。
天役共せずんば、天の咎必ず至らん」と。
省察ここに到れば、則ち我が身の苟に生く可からざるを知る。
人は必ず自ら反省して考察すべきである。
「天は何ゆえに自分をこの世に生み出し、何をさせようとしているのか。
自分は天が生んだものであるから必ず役割がある。
その役割を果たさなければ天罰を受ける」と。
ここまで考えが明らかになると、いい加減に生きる訳に行かないことが分かってくるだろう。
坂村真民 「生きるのだ」
いのちいっぱい
生きるのだ
念じ念じて
生きるのだ
一度しかない人生を
何か世のため人のため
自分にできることをして
この身を捧げ
生きるのだ
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言志録13条より
学を為す。故に書を読む。
学問をして自己研鑽のために本を読む。本を読むことが学問ではない。
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言志録19条より
面は冷ならんことを欲し
背は煖ならんことを欲し、
胸は虚ならんことを欲し、
腹は実ならんことを欲す。
頭は冷静で、
人には温かく、
心にわだかまりがなく、
腹は座っているようありたい。
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言志録21条より
心下痞塞すれば、百慮皆錯る。
心の奥底が塞がっていると、どんな考えも誤ったものになる。
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言志録26条より
事を慮るは周詳ならんことを欲し、
事を処するは易簡ならんことを欲す。
物事を考える時は周到で緻密であるようにしたい。
物事に対処する時は手早く簡単にするようにしたい。
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言志録27条より
真に大志ある者は、克く小物を勤め、
真に遠慮あるものは、細事を忽にせず。
真に大志を抱く者は小さな事柄でも一生懸命に勤め、
また真に先々のことまで考えている人は些細な事柄もおろそかにしない。
二宮尊徳翁の『積小為大』
大事を為さむと欲せば、小なる事を怠らず勤むべし。
小積もりて大となればなり。凡そ小人の常、大なる事を欲して小なる事を怠り、
出来難き事を憂いて、出来易き事を勤めず。夫れ故、終に大なる事をなすこと能わず。
夫れ大は小を積んで大となる事を知らぬ故なり。
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言志録33条より
志有るの士は利刃の如し。百邪辟易す。
志無きの人は鈍刀の如し。童蒙も侮翫す。
志のある者は鋭利な刃のようで、魔物・誘惑も退散する。
志の無いものは切れない刀のようで、子供ですら馬鹿にする。
自分の学問や仕事に社会的な価値を見付けて励むことを『志を持つ』という。志はエネルギーを生む。
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言志録36条より
人の言は須らく容れて之を択ぶべし。
拒む可からず。又惑う可からず。
他人の言は全て聞き入れてから、よしあしを選択すべきである。
最初から拒むべきではない。又その人の言に惑うことがあってはいけない。
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言志録37条より
能く人を容るる者にして、而る後以て人を責むべし。
人も亦其の責を受く。
人を容るること能わざる者は人を責むること能わず。
人も亦其の責を受けず。
人を寛容に受け入れる度量の有る人が人の欠点を責めることができる。
責められる人もその責を受け入れる。
人を受けきれる度量の無い人は他人の欠点を責める資格は無い。
責められた人は受け付けない。
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言志録42条より
分を知りて、然る後に足るを知る。
自分の身のほどを知って、初めて現状に満足することを知る。
老子に『足るを知る者は富む』とある。
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言志録43条より
昨の非を悔ゆる者は之れ有り。
今の過を改むる者は鮮なし。
過去の過ちを後悔する人はいるが、
現在している過ちを改める人は少ない。
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言志録46条より
土地人民は天物なり。
承けて之を養い、物をして各其の所を得しむるは、是れ君の職なり。
人君或は謬りて、土地人民は皆我が物なり、と謂うて之を暴す。
此を之れ君、天物を偸むと謂う。
土地人民は天からの授かり物である。
受けてこれを養い、適切な働き場を与えるのが、君主の仕事である。
ところが勘違いして「土地人民は全て自分のものである」と乱暴に扱う君主がいる。
それは天からの授かり物を盗むと言う事である。
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言志録54条より
酒は穀気の精なり。微しく飲めば以て生を養うべし。
過飲して狂酗に至るは、是れ薬に因りて病を発するなり。
酒は穀類のエキスだから少しずつ飲めばとても体にいい。
人は時々飲みすぎて狂った様になる。
薬でも分量を間違えると大変なことになるのだ。
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言志録67条より
利は天下公共の物なれば、何ぞ曽て悪有らん。
但だ自ら之れを専にすれば、則ち怨を取るの道たるのみ。
利益を得るのは悪いことではない。
しかし独占しようとすると怨みを買う。
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言志録70条より
凡そ人を諌めんと欲するには、唯だ一団の誠意、言に溢るること有るのみ。
いやしくも一忿疾の心を挟まば、諌は決して入らず。
人に忠告しようとするならば誠意を示して、それが言葉に溢れるようでなければならない。
怒りや憎しみの気持がほんの少しでもあれば忠告は相手に入っていかない。
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言志録71条より
諫を聞くものは、固より須らく虚懐なるべし。
諫を進むる者も、亦須らく虚懐なるべし。
忠告を聞くものはわだかまりのない心で聞かなければならない。
忠告する者もわだかまりのない気持ちでなければならない。
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言志録84条より
下情は下事と同じからず。
人に君たる者、下情に通ぜざるべからず。
下事は則ち必ずしも通ぜず。
下情(民衆の実情)と下事(しもじもの仕事)は同じではない。
人の上に立つ者は下情には通じているべきである。
下事には必ずしも通じていなくとも良い。
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言志録88条より
著眼高ければ、則ち理を見て岐せず。
目の着け所を高い所に置くならば道理が見えて迷うことが無い。
共感度:B / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録92条より
やむを得ざるに薄りて、而る後に諸を外に発する者は花なり。
準備万端整えば花は咲かざるを得ん、自分の為に・・。
人も成長すれば必ず与えられた義務を果たさねばならぬ。
一生懸命それを励むとき、これは美しい花だと人が認める。
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言志録119条より
士は当に己に在る者を恃むべし。
動天驚地極大の事業も、亦都べて一己より諦造す。
立派な男子たるものは自分自身を頼りにすべし。
天地を揺るがすような大事業も全て自分自身で創り出すものである。
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言志録120条より
己れを喪えば斯に人を喪う。
人を喪えば斯に物を喪う。
自己を失えば人が離れていき、
そして信用を失う。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録121条より
士は独立自信を貴ぶ。
熱に依り炎に附くの念、起こすべからず。
立派な男子たるものは独立して自信を持つことが大切である。
権勢のある者におもねりへつらうな。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録123条より
人は少壮の時に方りては、惜陰を知らず。
知ると雖も太だしくは、惜しむに至らず。
四十を過ぎて已後、始めて惜陰を知る。
既に知るの時、精力漸く耗せり。故に人の学を為むるには、須らく時に及びて立志勉励するを 要すべし。
しからざれば則ち百たび悔ゆとも亦竟に益無からむ。
人間は若いころは、時間を大切にすることを知らない。
知っていても本当に惜しむことをしない。
四十歳を過ぎた後、初めて「惜陰」に気付く。
しかし、この頃になると 精力も次第に衰えている。
だから学問をしようと思ったら、ぜひとも若く元気なうちに志を立てて勉め励まなければならない。
そうでないと、どんなに後悔しても、間に合わず何の益も無い。
陶淵明雑詩より
人生は根蔕(土台)無く
瓢たること(風で飛ぶ)陌上(路上)の塵の如し
中略
時に及んで当に勉励すべし
歳月は人を待たず
朱熹の偶成より
少年老い易く学成り難し
一寸の光陰軽んず可からず 以下略
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言志録125条より
已むべからずの勢に動けば、則ち動いて括られず。
枉ぐべからざるの途を履めば、則ち履んで危からず。
やむにやまれぬ状態で動けば妨げられることは無い。
正しい道を進めば何の危険もない。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録130条より
急迫は事を敗り、寧耐は事を成す。
慌てて行動すると失敗する。じっくり取り組めば成功する。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録132条より
聖人は死に安んじ、賢人は死を分とし、常人は死を畏る。
聖人は死を不安に思わず、賢人は死を天の定めと思い、一般人は死を畏れる。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録148条より
信を人に取ること難し。
人は口を信ぜずして躬を信じ、躬を信ぜずして心を信ず。
是れを以て難し。
人から信用を獲得するのは難しい。
人は言葉を信用せず、行動を見て判断し、更にその人の真意を見抜いて判断する。
よって難しい。
共感度:B / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録154条より
妄念を起こさざるは是れ敬にして、妄念起こらざるは是れ誠なり。
みだらな考えを起こさないのが敬であり、みだらな考えが起こらないのが誠である。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志録158条より
己を修むるに敬を以てして、以て人を安んじ、以て百姓を安んず。
壱に是れ天心の流注なり。
自分を修めるのに敬の心(人を敬い、自分を律すること)をもってすれば、人を安らかにし、さらに天下の人民をも安心させられる。
まさに敬は天の心が流れ注いだものである。
西郷南洲遺訓第21条より
道は天地自然の道なるゆえ、講学の道は敬天愛人を目的とし、身を修するに克己を以て終始せよ。
総じて人は己に克つを以て成り、自ら愛するを以て敗るるぞ。
共感度:D
言志録180条より
一物の是非を見て、大体の是非を問わず。
一時の利害に拘りて、久遠の利害を察せず。
政を為すに、此くの如くなれば、国危し。
一部を見て全体を見ない。
一時の利害で、将来を考えない。
このような政治は道を誤る。
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言志録184条より
人を教うる者、要は須らく其の志を責むべし。
聒聒として口に騰すとも、益無きなり。
人を教える者の最も肝腎な事は志が堅固であるかを見るべきである。
ただ口やかましく言っても無益である。
「志を立てて万事の源と為す」吉田松陰
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言志録221条より
私欲は有るべからず。
公欲は無かるべからず。
公欲無ければ、則ち人を恕する能わず。
私欲有れば、則ち物を仁する能わず。
自分の利益ばかりを追求するのは良くない。
公共の利益は追求すべきである。
公共心がなければ他人を思いやることが出来ない。
利己心が有れば慈悲の心で他人に物を施すことが出来ない。
共感度:A
言志録233条より
能く子弟を教育するは、一家の私事に非ず。
是れ君に事うるの公事なり。
君に事うるの公事に非ず。天に事うるの職分なり。
子供をしっかり教育するのは一家の私事ではない。
これは主君に事える公事である。
いや、主君に事える公事でなく、天に事える大切な本分である。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志後録14条より
官に居るに好字面四有り。
公の字、正の字、清の字、敬の字なり。
能く此れを守らば、以て過無かるべし。
不好の字面も亦四有り。
私の字、邪の字、濁の字、傲の字なり。
苟くも之れを犯さば、皆禍を取るの道なり。
官職に就く者にとって好ましい文字が4つある。
公、正、清、敬の4文字である。
これらの文字の意味するところを守れば決して過失を犯すことはないだろう。
一方、好ましくない文字も4つある。
私、邪、濁、傲の4文字である。
かりそめにもこれらの4つを犯したならば、みな自分に禍(わざわい)をまねくことになる。
共感度:D
言志後録18条より
閑想客感は志の立たざるに由る。
一志既に立てば、百邪退聴せん。 抜粋
つまらぬ事に心が動くのは目標がたっていないからだ。
志が立っていれば多くの邪念は退散する。
共感度:B / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志後録20条より
宇は是れ対待の易にして宙は是れ流行の易なり。
宇宙は我が心に外ならず。
宇は限りなく大きなもの、宙は限りなく長い時の流れ。
ともにとてもとても見極められるものではないが、心は宇も宙も感じられる。
つまり宇宙とはとりも直さず、我が心にほかならない。
共感度:D
言志後録23条より
君子も亦利害を説く。利害は義理に本づけばなり。
小人も亦義理を説く。義理は利害に由ればなり。
徳の高い人でも利害を説く。それは利害が義理人情に基づくものだからである。
徳のない人もまた義理を説くが、それは義理が自分の利害にかかわっているからである。
共感度:D
言志後録24条より
真の巧名は道徳便ち是れなり。
真の利害は、義理便ち是れなり 。
真の功績や名誉は道徳を実践した結果得られるものである。
本当の利害は義理である。つまり義理:人道に則った利益を考えなくてはならない。
共感度:D
言志後録28条より
心の官は則ち思なり。
思の字は只だ是れ工夫の字のみ。
思えば則ち愈々精明に、愈々篤実なり。
その篤実なるよりして之を行と謂い、其の精明なるよりして之を知と謂う。
知行は一の思の字に帰す。
心の役目は思うことである。
思うということはただ道の実行について工夫することである。
思えばますます精しく明らかになりますますまじめに取り組むようになる。
そのまじめに取り組むところからこれを行と言い、その精密で明確なところからこれを知という。
知も行も思の一字に帰着する。
知行合一:陽明学の根本思想 王陽明『伝習録』にある
知識と行為は一体であるということ。
本当の知は実践を伴わなければならないということ。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志後録33条より
以春風接人
以秋霜自粛
春風を以て人に接し、
秋霜を以て自ら粛む。
春風のような温かい心で人に接し、
秋の霜のような厳しい心で自らを律していく。
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言志後録34条より
克己の工夫は一呼吸の間に在り。
自分の邪心・誘惑に打ち勝つ工夫は呼吸の間にある。一瞬たりとも油断してはならない。
共感度:D
言志後録53条より
鱗介の族は水を虚と為し、水の実たるを知らず。
魚介類は水をないように考え、水があってもそれに気づかない。
我々も太陽、自然の恩恵に気づいていない場合が多い。
共感度:D
言志後録55条より
志気は鋭ならんことを欲し、
操履は端ならんことを欲し、
品望は高ならんことを欲し、
識量は豁ならんことを欲し、
造詣は深ならんことを欲し、
見解は実ならんことを欲す。
気概(いきごみ)は鋭くありたい、
行い(操履)は正しくありたい、
品位や人望は高くありたい、
見識や度量は広くありたい、
学識は深くありたい、
物の見方や解釈は真実でありたい。
『史記』李将軍伝賛より『桃李成蹊』
桃李もの言わざれど下自ら蹊を成す
『雨ニモマケズ』 宮澤賢治
雨ニモマケズ 雨にも負けず
風ニモマケズ 風にも負けず
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 雪にも夏の暑さにも負けぬ
丈夫ナカラダヲモチ 丈夫なからだをもち
慾ハナク 慾(よく)はなく
決シテ瞋ラズ 決して瞋(いか)らず
イツモシヅカニワラツテヰル いつも静かに笑っている
一日ニ玄米四合ト 一日に玄米四合と
味噌ト少シノ野菜ヲタベ 味噌と少しの野菜を食べ
アラユルコトヲ あらゆることを
ジブンヲカンジヨウニ入レズニ 自分を勘定に入れずに
ヨクミキキシワカリ よく見聞きし分かり
ソシテワスレズ そして忘れず
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ 野原の松の林の陰の
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ 小さな萱ぶきの小屋にいて
東ニ病氣ノコドモアレバ 東に病気の子供あれば
行ツテ看病シテヤリ 行って看病してやり
西ニツカレタ母アレバ 西に疲れた母あれば
行ツテソノ稻ノ束ヲ負ヒ 行ってその稲の束を負い
南ニ死ニサウナ人アレバ 南に死にそうな人あれば
行ツテコハガラナクテモイヽトイヒ 行ってこわがらなくてもいいといい
北ニケンクワヤソシヨウガアレバ 北に喧嘩や訴訟があれば
ツマラナイカラヤメロトイヒ つまらないからやめろといい
ヒドリノトキハナミダヲナガシ 日照りの時は涙を流し
サムサノナツハオロオロアルキ 寒さの夏はおろおろ歩き
ミンナニデクノボートヨバレ みんなに木偶坊(デクノボウ)と呼ばれ
ホメラレモセズ 褒められもせず
クニモサレズ 苦にもされず
サウイフモノニ そういうものに
ワタシハナリタイ 私はなりたい
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言志後録64条より
晦に処る者は能く顕を見、
顕に拠る者は晦を見ず。
陽の当たる場所に居る人は日陰に居る人にいつも見られている。
陽の当たる場所に居る人は日陰に居る人などあまり見ない。
陽の当たる場所に居る人は気をつけねばいけない。
共感度:A / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志後録77条より
聖賢を講説して、之れを躬にする能わざるは、之れを口頭の聖賢と謂う。吾れ之れを聞きて一たび惕然たり道学を論弁して、之れを体する能わざるは、之れを紙上の道学と謂う。
吾れ之れを聞きて再び惕然たり。
聖賢の道を説くが、実践できない人を口頭の聖賢という。
私は之れを聞いて恐れ入った
儒学を論じたり弁じたりしているのに、体得できない人を紙上の道学という。
私はこれを聞いて、再び恐れ入った。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志後録80条より
智・仁は性なり。勇は気なり。
配して以て三徳と為す。
みょう(玄偏に少)理有り。
智恵と仁愛は本性=天性である。勇気は本性から生じる気で後天的なものである。
この智・仁・勇を配合して三徳となす。
これは妙理である。
共感度:D
言志後録88条より
敬は勇気を生ず。
「敬」とは人を敬い、また自らを律し、慎むことです。自分に厳しくして、心の誘惑に打ち勝つこと。克己。
共感度:B
言志後録93条より
能く寝食を慎むは孝なり。
自分の暮しを大切にして親に心配をかけない。親孝行とは簡単なものである。
共感度:D
言志後録94条より
天を以て得る者は固く、人を以て得る者は脆し。
公正な道理で成し得た物は強固だが、智謀で人為的に得たものは脆弱である。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志後録98条より
人は皆身の安否を問うことを知れども、心の安否を問うを知らず。
宜しく自ら問うべし。能く闇室を欺かざるや否や。
能く衾影に愧じざるや否や、能く安穏快楽を得るや否やと。
時時是の如くすれば、心便ち放ならず。
人は皆、身体の健康を問うことを知っているが、心が安らかか問うことを知らない。
自らに問うべし。暗い部屋の中でも自分自身を欺いていないか。
夜具や自分の影に恥じる事はないか、心が安らかで楽しいかどうか。
時々このように自分を見直せば、心がわがままになることはない。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志後録109条より
百年すとも再生の我なし。
それ曠度す可けんや。
100年経っても再び生まれてくることはない。
毎日を虚しく過ごしてはならない。
共感度:A
言志後録130条より
精神を収斂して、以て聖賢のの書を読み、
聖賢の書を読みて、以て精神を収斂す。
精神を引き締めて聖人や賢人の書物を読み、
聖賢の書物を読んで心を引き締める。
共感度:C
言志後録138条より
学は自得するを貴ぶ。
人徒らに目を以て字有るの書を読む。
故に字に局して、通透するを得ず。
当に心を以て字無きの書を読むべし。
乃ち洞して自得する有らん 。
学問は自ら会得することが大切である。
人は文字に囚われて、その背後を見通せないでいる。
心で書は読むべし。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志後録141条より
小薬は是れ草根木皮、
大薬は是れ飲食衣服、
薬原は是れ心を治め身を修むるなり。
毎日の生活を正すのが第一の健康法。
薬に頼るのは二の次。
共感度:D
言志後録178条より
人は当に自ら己れの才性に長短有るを知るべし。
自分の才能や性格に長所と短所があることを認識しておくべきである。
共感度:D
言志後録198条より
人主の学は智・仁・勇の三字に在り。
能く之を自得せば、特り終身受用して尽きざるのみならず、而も掀天掲地の事業、憲を後混に垂る可き者も、亦断じて此を出でず。
人君たる者が学ばなくてはいけないものは智・仁・勇の三字に在る(論語に「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼れず」とあります)。
この三字を会得すれば一生この三徳を受用しても尽きることはなく、さらに天地が驚くほどの事業を成し遂げ、手本を後世に残すことができるのもこの三徳を実践する以外にない。
共感度:D
言志後録210条より
識量は知識と自ら別なり。
知識は外に在り、識量は内に在り。
見識・度量と知識はまったく別のものである。
知識は外的後天的なものであり、識量は先天的に内に備わっているものである。
共感度:C
言志後録211条より
人才に虚実在り。
宜しく弁識すべし。
人の才能には虚と実(中味が伴っていない場合が)ある。
きちんと識別すべき。
共感度:D
言志後録224条より
信を人に取れば、則ち財足らざること無し。
人に信用されるようになればお金に困るということはない。
共感度:D
言志後録239条より
余は弱冠前後、鋭意書を読み、目、千古を空しゅうせんと欲す。
中年を過ぐるに及び、一旦悔悟し、痛く外馳を戒め、務めて内省に従えり。
然る後に自ら稍得る所有りて、この学に負かざるを覚ゆ。
今は則ち老ゆ。少壮読む所の書、過半は遺忘し、茫として夢中の事の如し。
稍留りて胸臆に在るも、亦落落として片段を成さず。
益々半生力を無用に費ししを悔ゆ。
今にして之を思う、『書は妄に読む可からず、必ず択び且つ熟するところ有りて可なり。
只だ要は終身受用足らんことを要す』と。
後生、我が悔を蹈むこと勿れ。
私は20歳頃、一生懸命に読書して、千年も昔の事まで知り尽くしたいと思った。
中年を過ぎてから、一度以前の事を後悔して、心を外に向けることを戒め、もっぱら内心に反省するようになった(知識の習得だけでなく自分で思索するように努めた)。
このようにしてからはやや得る所があり、これが聖賢の学に反しないことを覚(さと)り得た。
今は老人になってしまって、若い頃に読んだ書物は、半分以上ほども忘れてしまい、ぼんやりと夢のようである。
少し心に残っていることも、まばらでまとまっていない。
それを考えるとますます尊い半生を無駄な事に精力を費やしてきた事を後悔している。
今になって考えると、『書物はむやみに読むべき物ではなく、必ずよく書物を選択して、熟読するのがよい。
ただ肝心なことは読書して得たことを一生涯十分に活用することである』。
後輩は自分(佐藤一斎)が経験した後悔を繰り返してはいけない。
共感度:C
言志後録243条より
血気には老少有るも、志気には老少無し。
老人の講学には当に益々励まして、少壮の人に譲る可からざるべし。
以下省略
血気には老人と青年では差があるが、意気ごみには差がない。
老人が学問をしようと思えば志気を奮い立たせて、少壮の人に負けてはいけない。
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言志晩録1条より
学を為すの緊要は、心の一字に在り。
心を把りて以て心を治む。之れを聖学と謂う。
政を為すの着眼は、情の一字に在り。
情に循って以て情を治む。之れを王道と謂う。
王道・聖学は二に非ず。
学問する場合、最も大切なことは心の一字である。
自分の心をしっかり把握して心を高めていく。これを聖人の学問と言うのである。
政治を行う場合の着眼点は情の一字にある。
人情の機微に従って人々を治めていく。これを王者の政道と言う。
王道・聖学は同一である。
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言志晩録13条より
堤一燈
行暗夜
勿憂暗夜
只頼一燈
一燈を堤げて、
暗夜を行く。
暗夜を憂れうる勿れ。
只一燈を頼め。
暗夜は逆境、一燈は信念・志と解釈すべき。
または暗夜は苦難・煩悩。一燈は本心・信心と思う。
共感度:A / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志晩録55条より
独得の見は私に似たり。人其の驟かに至るを驚く。
平凡の議は公に似たり。世其の狃れ聞くに安んず。
凡そ人の言を聴くには、宜しく虚懐にして之れを邀うべし。
苟くも狃れ聞くに安んずる勿くば可なり。
その人だけの独特の見解は私的な偏見に見える。人々は急に耳にするので驚いてしまう。
普通一般的な議論は公論のように見える。世間の人は聴きなれているので安心する。
大体、人の意見を聴くには虚心坦懐であるべき。その上でよく判断すべきである。
かりにも、聞きなれた説に安んじなければそれでよい。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志晩録60条より
少而学則壮而有為
壮而学則老而不衰
老而学則死而不朽
少くして学べば、則ち壮にして為すこと有り。
壮にして学べば、則ち老いて衰えず。
老いて学べば、則ち死して朽ちず。
若くして学べば、大人になって世のため、人のために役に立つ人間になる。
壮年になって学べば、年をとっても衰えない。いつまでも活きいきしていられる。
年をとって学べば、死んでもくさらない。その精神は永遠に残る。
何を学ぶかというと江戸時代ですから中国古典の四書五経になるのでしょう。佐藤一斎は儒学者ですから「如何に正しく生きるべきか」ということだと思います。
「人生まれて学ばざれば、生まれざるに同じ。学んで道を知らざらば学ばざるに同じ。知って行わざれば知らずに同じ」貝原益軒
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言志晩録70条より
我れは当に人の長処を視るべし。
人の短処を視る勿れ。
短処を視れば即ち彼に勝り、我れに於いて益なし。
長処を視れば即ち彼我れに勝り、我れに於いて益あり。
人を見るときは長所を見て、
短所は視るべきでない。
短所を視れば自分が相手より優れていると思い、努力しなくなる。
長所を見れば学ぶことが多く有り、有益である。
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言志晩録87条より
満を引いて度に中れば、発して空箭無し。
人事宜しく射の如く然るべし。
弓を十分に引きしぼって的に当てれば、当たらない空矢は無い。
人間社会の物事でも、弓を射るように十分に考え、準備して断行すれば、失敗する事はない。
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言志晩録103条より
彼を知り己を知れば百選百勝す。
彼を知るは、難きに似て易く、己を知るは、易きに似て難し。
「彼を知り、己を知れば百戦殆(あやう)からず・・・」孫子
「山中の賊を破るは易く、心中の賊を破るは難し」王陽明
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言志晩録141条より
婦徳は一箇の貞字。
婦道は一箇の順字。
婦人が守るべき徳は操が正しいことを意味する「貞」の一字である。
婦人が行うべき道は道理に素直に従うという意味の「順」の一字である。
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言志晩録169条より
我が言語は、吾が耳自ら聴くべし。
我が挙動は、吾が目自ら視るべし。
視聴既に心に愧じざらば、則ち人も亦必ず服せん。
自分の言葉は自分で聴くべし。
自分の行動は自分の目で視るべき。
自分の目で視、自分の耳で聴いて心に愧じることがなければ、人もまた必ず従う。
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言志晩録170条より
口を以て己の行いを謗ること勿れ。
耳を以て人の言を聞くこと勿れ。
自分の口で自分の行動を非難するものではない。
自分の耳で他人の言葉を聞いてはいけない(心で聴いて判断すべき)
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言志晩録177条より
人は当に自ら吾が心を礼拝し、自ら安否を問うべし。
吾が心は即ち天の心、吾が身は即ち親の身になるを以てなり。
是れを天に事うと謂い、是れを終身の孝と謂う。
人は常に自分の心を拝み、それが健全かどうか問うべきである。
自分の心は天から与えられた心であり、自分の身体は親の遺伝子を引き継いでいる。
これを天に事える言い、身体を大切にすることを生涯通しての孝と言う。
朝、鏡の前で『髪かたち整う前にまず思え、己が心の姿いかにぞ』
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言志晩録190条より
富人を羨むこと勿れ。
渠れ今の富は安くんぞ其の後の貧を招かざるを知らんや。
貧人を侮ること勿れ。
渠れ今の貧は安くんぞ其の後の富を貽せざるを知らんや。
畢竟天定なれば、各其の分に安んじて可なり。
金持ちを羨んではいけない。
彼の現在の富がどうして後日の貧乏を招かないということが判ろうか。
貧乏人を侮ってはいけない。
彼の現在の貧乏がどうして将来の金持ちの元であることを知ることが出来ようか
結局、貧富は天が定めるものであるから、各人はその本分に安んじて真剣に生きていけばよい。
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言志晩録193条より
人は皆将来を図れども、而も過去を忘る。
殊に知らず、過去は乃ち将来の路頭たるを。
分を知り足るを知るは、過去を忘れざるに在り。
人は皆、将来のことを考えるが、過去のことは忘れてしまっている。
とりわけ、過去が将来の人生の出発点であることを忘れている。
自分の立場の分限を知り、現状に納得することは過去を忘れないことから生まれる。
言志録42条参照
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言志晩録202条より
人各分あり。当に足るを知るべし。
但だ講学は則ち当に足らざるを知るべし。
人にはそれぞれ本分がある。それに満足して貪らず、安らかに暮らすことが大切である。
ただし、学問する場合はなお足らないことを知って努力を続けなくてはならない。
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言志晩録205条より
艱難は能く人の心を堅うす。
故に共に艱難を経し者は、交わりを結ぶも亦密にして、竟に相忘るる能わず。
「糟糠の妻は堂より下さず」とは亦此の類なり。
辛く苦しい体験は人の心を堅固にする。
だから一緒に艱難を経験してきた者はその交友も緊密でいつまでも忘れることは出来ない。
「若い頃から一緒に苦労してきた妻を出世したからといって、家から追い出すようなことはせず大切にする」というのも同じ道理である。
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言志晩録209条より
人を欺かざる者は、人も亦敢えて欺かず。
人を欺く者は、卻って人の欺く所と為る。
人をだまさない者は、人もまた決してだまさない。
人をだます者は、却って人からだまされるようになる。
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言志晩録214条より
赤子の一啼一咲は皆天籟なり。
老人の一話一言は皆活史なり。
赤ん坊の泣き声や笑う声は松の枝吹く風の様だ。
老人の話は生きていくのにとても参考になる。
そんな事を感じたら今生きていられるのは本当に嬉しい。
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言志晩録222条より
石重し。故に動かず。
根深し。故に抜けず。
人は当に自重を知るべし。
石は重いから動かない。
根が深ければ抜けない。
人も慎んで軽々しい言動をとらないようにすべき
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言志晩録227条より
真孝は孝を忘る。念々是れ孝なり。
真忠は忠を忘る。念々是れ忠なり。
真の孝行とは自分が孝行していることを殊更に意識しないものである。思うことが全て孝行なのである。
真の忠義とは自分が忠義であると殊更に意識しないものである。思うことが全て忠義なのである。
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言志晩録229条より
父の道は当に厳中に慈を存すべし。
母の道は当に慈中に厳を存すべし。
父の道は厳格のうちに慈愛がなければならない。
母の道は慈愛のうちに厳しさがなければならない。
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言志晩録233条より
人の過失を責むるには、十分を要せず。
宜しく二三分を余し、渠れをして自棄を甘んぜず、以て自ら新たにせんことを覓め使むべくして可なり。
人の過失を責めるときには、徹底的に責めるのはよくない。
二、三分は残しておいて、その人が自棄にならずに、自分で改め、立ち直るように仕向けてやるのがよい。
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言志晩録239条より
凡そ事を為すに、意気を以てするのみの者は、理に於て毎に障碍有り。
何か事をなすときに、意気込みだけで行う者は、道理において、いつも間違いがある。
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言志晩録240条より
人は恥無かる可からず。又悔無かる可からず。
悔を知れば則ち悔無く、恥を知れば則ち恥無し。
人は恥を知るということがなくてはならない。又悔い改めるということがなくてはならない。
悔い改めることを知っていれば悔い改めることはなくなるし、恥を知ることを心得ておれば、恥をかくことはなくなるものである。
言志耊録23条参照
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言志晩録247条より
恩を売る勿れ。
恩を売れば卻って怨を惹く。
誉を干むる勿れ。
誉を干むれば、輒ち毀を招く。
人に恩を売ってはいけない。
下心を持って恩を売れば、却って人の怨みを買うことになる。
名誉を求めてはいけない。
内容の伴わないで名誉を求めれば、非難されるだけである。
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言志晩録248条より
日間の瑣事は、世俗に背かざるが可なり。
立身・操守は世俗に背くこと可なり。
日常の細かなことは世間の風俗に反しないようにするのが良い。
自分が志を立て、それを守り貫こうとする場合は世俗に背いても構わない。
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言志晩録252条より
三百六旬吉ならざる日なし。
一念善を作す是吉日也。
三百六旬凶ならざる日なし。
一念悪を作す是凶日也。 抜粋
毎日良いことをすれば一年中が吉日。
毎日悪いことをすれば一年中が凶日。
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言志晩録258条より
昨日を送りて今日を迎え、今日を送りて明日を迎う。
人生百年、此くの如きに過ぎず。故に宜しく一日を慎むべし。
一日慎まずんば、醜を身後に遺さん。恨むべし。
羅山先生謂う、「暮年宜しく一日の事を謀るべし」と。
余謂う、「此の言、浅きに似て浅きに非ず」と。
昨日を送って今日を迎え、今日を送って明日を迎える。
人生100年生きたとしてもこの繰り返しに過ぎない。だからこそ一日を慎まなくてはならない。
一日を慎まなければ、死後に醜名(しこな)を残す事になる。残念な事である。
林羅山先生がおっしゃった「晩年になったら、その日一日の事だけ考えて生きるがよい」と。
私は「この言葉は浅薄(せんぱく)なように思われるが決して浅薄ではない」と。
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言志晩録267条より
尋常の老人は、多く死して仏と成るを要む。
学人は則ち当に生きて聖と作るを要むべし。
普通の老人は多くが死んで成仏することを願う。
学問を修める者は生きて聖人になることを念願すべきである。
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言志晩録280条より
養生工夫
在節一字
養生の工夫は、節の一字に在り。
養生の工夫は、一言で言えば節度を守るという事である。
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言志晩録283条より
我れより前なる者は、千古万古にして、我れより後なる者は、千世万世なり。
仮令我れ寿を保つこと百年なりとも、亦一呼吸の間のみ。
今、幸に生まれて人なり。庶幾くは人たるを成して終わらん。斯れのみ。本願此に在り。
自分が生まれる前には千万年の遠い過去があり、自分より後にも千万世の遥(はる)かな未来がある。
たとえ自分が百年生きたとしても歴史の中では一呼吸の間でしかない。
幸い、人間として生まれてきた以上、人としての使命を全うして一生を終わりたい。一生の念願はここにある。
初唐の詩人劉廷芝の詩より 年々歳々花相似たり
歳々年々人同じからず
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言志晩録290条より
海水を器に斟み、器水を海に翻せば、
死生は直ちに眼前に在り。
海水を器に汲み、その水を海に還せば、
死生の道理はそのまま目の前にある。
器の海水が生で、海に還した水が死に当たる。
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言志耋録17条より
学を志すの士は、当に自ら己を頼むべし。
人の熱に因ること勿れ。 抜粋
学問を志す者は自分の力に頼るべきである。
他人の助けを借りてはいけない。
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言志耋録18条より
自家田中の一粟をも棄つること勿れ。
隣人畝中の一菜をも摘むこと勿れ。
自分の物は粟一粒をも無駄にするな。
他人の物は菜っ葉一枚でもとるな。
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言志耋録23条より
立志の工夫は、須らく羞悪念頭より、踉脚を起こすべし。
恥ず可からざるを恥ずること勿れ。
恥ず可きを恥じざること勿れ。
孟子謂う、「恥無きを之れ恥ずれば、恥無し」と。
志是に於いてか立つ。
志を立てるにはまず自分の不善を恥じ、人の不善を憎むという羞悪心から出発しなければならない。
恥じなくてよいことを恥じることはないが、
恥じなければならないことを恥じないようではいけない。
孟子も「恥じなければならないことに恥じないでいることを恥と感じれば恥をかかなくなる」といっている。
このようにして志が始めて立つのである。
恥じなくてよいこと。
無学歴、貧乏、服装が貧弱、美男美女でない、お世辞が言えない事。
恥じなければならないこと。
志が無いこと、厚顔無恥、相手により態度を変えること、正直でないこと、陰口を言うこと、約束を守れないこと、考えが卑屈であること、不平不満が多いこと。
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言志耋録24条より
私欲の制し難きは、志の立たざるに由る。
志立てば、真に是れ紅炉に雪を点ずるなり。
故に立志は徹上徹下の工夫たり。
自分の欲望を抑えがたいのはしっかりと志が立っていないのが原因である。
志が立っていれば、これはまさに火が燃えている炉の中に一掴みの雪を置くようなものだ。
だから立志というものは上から下まであらゆる事柄に通じる工夫なのである。
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言志耋録31条より
困心衡慮は智恵を発揮し、
暖飽安逸は思慮を埋没す。
猶を之れ苦種は薬を成し、甘品は毒を成すがごとし。
とても困った時本当の知恵が湧いてくる。
安逸を貪っていると知恵は退化していく。
これは苦いものが薬となり、甘いものが毒になるようなものである。
共感度:C
言志耋録33条より
得意の事多く、失意の事少なければ、其の人、知慮を減ず。不幸と謂うべし。
得意の事少なく、失意の事多ければ、其の人、知慮を長ず。幸と謂うべし。
思うように事が運び、失望する事が少なければ真剣に考える機会が少なくなり、智慧と思慮が減少していく。不幸と言うべきである。
思うように事がうまくいかず、失望する事が多ければ、その人は考える機会が多くなり、智慧と思慮が増していく。幸いと言うべきである。
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言志耋録39条より
気象を理会するは、便ち是れ克己の工夫なり。
語黙動止、都て篤厚なるを要し、和平なるを要し、舒緩なる要す。
粗暴なること勿れ。激烈なること勿れ。急速なること勿れ。
自分の気性を理解することは、すなわち自己に打ち克(か)つ工夫である。
語ることも黙ることも、動くことも止まることも総て親切で手厚くあり、おとなしく穏やかであり、ゆるやかでゆったりしておらなければならない。
粗暴で、激烈で、急速であってはならない。
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言志耋録44条より
一息の間断なく一刻の急忙なし。
即ちこれ天地の気象なり。
天地は止まらない、慌てない。
人生もかくありたい。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志耋録61条より
善く身を養う者は、常に病を病無きに治め、
善く心を養う者は、常に欲を欲無きに去る。
自分の身体に気を使う者は常に養生して病気にならないように努めている。
自分の精神修養に心掛けている者は常に私欲が起きる前に其の芽を摘み取るようにしている。
共感度:D
言志耋録62条より
情の発するや緩急有り。忿慾尤も急と為す。
忿は猶お火のごとし。懲さざれば将に自ら焚けんとす。
慾は猶お水のごとし。窒がざれば将に自ら溺れんとす。
損の卦の工夫、緊要なること此に在り。
感情が起こる場合緩急がある。最も急なのは怒りと情欲である。
怒りはあたかも猛火のようなもので、消火しなければ自分が焼け死んでしまう。
情欲はあたかも洪水のようなもので、塞(せ)き止めなければ溺れてしまう。
「易経」にあるこの修養工夫は誠に大切である。
共感度:D
言志耋録96条より
凡そ事を為すには、当に先ず其の義の如何を謀るべし。
便宜を謀ること勿れ。便宜も亦義の中に在り。
全ての事をなす場合には、先ずその事が道義に適(かな)っているかを考えなくてはならない。
特別な計らいをしてはいけない。特別な計らいも道義から外れてはいけない。
共感度:D
言志耋録105条より
人を知るは難くして易く、自ら知るは易くして難し。
但だ当に諸を夢寐に徴して以て自ら知るべし。
夢寐は自ら欺く能わず。
他人のことについて知るのは難しいようであるが易しい。自分自身を知るのは易しいようで難しい。
ただ、自分のことは夢に出るので知ることができる。
夢は自らを欺くことはできない。
共感度:D
言志耋録106条より
自らを欺かず。之れを天に事うと謂う。
自分自身を偽らない。これを天に事えると言います。
南洲翁遺訓に「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして己を尽し人を咎めず。我が誠の足らざるを尋ぬべし」とあります。
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言志耋録113条より
人は須らく忙裏にかん(門構えに月の文字:間の俗字)を占め、苦中に楽を存する工夫を著くべし。
人は多忙の中でも閑静な気持を持ち、苦しいときでも楽しみを見つける工夫をすべきである。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志耋録114条より
凡そ人事を区処するには、当に先ず其の結局の処を慮って、而る後に手を下すべし。
楫無きの舟は行ること勿れ。
的無きの箭は発つ勿れ。
大体、世間の諸事を処理していくには、終局の結果を予め考えてから、着手すべきである。
舵のない舟に乗ってはいけない。
的の無い矢は放ってはいけない。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志耋録124条より
世を渉るの道は、得失の二字に在り。
得べからざるを得ること勿れ。
失うべからざるを失うこと勿れ。此くの如きのみ。
世渡りの道は得と失の2字にある。
得てはいけない虚名とか正しくない利益のようなものは得てはいけない。
自分の信念・志のようなものは失くしてはいけない。これが処世の要道である。
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言志耋録130条より
足るを知って之れ足れば常に足る。
仁に庶し。
恥無きを之れ恥ずれば恥無し。
義に庶し。
老子は「足ることを知って満足するならば、いつも不足や不満を感じることはない」と言っている。
これは仁に近いと言える。
孟子は「恥ずべきことを恥じずにいることを恥として憎むのであれば恥は無くなる」と言っている。
これは義に近いと言える。
言志録42条、言志耊録23条参照
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言志耋録139条より
怠惰の冬日は何ぞその長きや。
勉強の夏日は何ぞその短きや。
長短は我れに在りて、日に在らず。
待つ有るの一年は、何ぞ其の久しきや。
待たざるの一年は、何ぞ其の速かなるや。
久速は心に在りて、年に在らず。
怠けて過ごしていると、短い冬の日でもなんと長いことであろうか。
勉め励んでいると長い夏の日でもなんと短いことか。
この長短は自分の心の持ち方次第で、日そのものにはない。
また、なにかの楽しみを待っている1年はなんと待ち遠しいものか。
何ら待つことの無い1年はなんと速く過ぎていくことか。
この久速も自分の心の持ち方次第で、年そのものにはない。
共感度:D
言志耋録140条より
朝にして食わざれば、則ち昼に饑え、少にして学ばざれば、則ち壮にして惑う。
饑うる者は猶お忍ぶ可し。惑う者は奈何ともす可からず。
朝食を摂らないと昼に空腹感じる同様に、若いときに学問をしておかなければ、壮年になって迷いが生じて途方にくれる。
ひもじいのは我慢ができるが、無学で惑うのはどうにもしようもない。
共感度:D / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志耋録142条より
富を欲するの心は即ち貧なり。
貧に安ずるの心は即ち富なり 。
欲にはきりがない。どこ迄もその心は貧しい。
今生きているありがたさを感じたらそれが富というものだ。
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言志耋録154条より
必ずしも福を干めず、禍無きを以て福と為す。
必ずしも栄を希わず、辱無きを以て栄と為す。
必ずしも寿を祈らず、夭せざるを以て寿と為す。
必ずしも富を求めず、餒えざるを以て富と為す。
必ずしも幸福を求める必要は無い。禍いがない事を幸福と思えば良い。
必ずしも栄誉を希わなくても良い。恥をかかなければ栄誉なのである。
必ずしも長寿を祈らなくても良い。若死にしなければ長寿と言えるのである。
必ずしも金持ちにならなくても良い。飢えることがなければ富んでいるのと同じである。
共感度:A
言志耋録169条より
我れ恩を人に施しては忘る可し。
我れ恵みを人に受けては忘る可からず。
自分が恩恵を人に施した場合はこれを忘れるべきである。
しかし、自分が恩恵を人から受けた場合は決して忘れてはならない。
共感度:C
言志耋録180条より
人の一話一言は徒らに聞くこと勿れ。
必ず好歹有り。弁ず可し。
人のちょっとした話や言葉でもいい加減に聞いてはいけない。
その話や言葉には必ず善と悪があるから、よく弁別すべきである。
共感度:C
言志耋録182条より
有りて無き者は人なり。
無くて有る者も亦人なり。
人は多数いるけれども、いないのは立派な人物である。
しかし、立派な人物はいないようでもいる。
共感度:B
言志耋録214条より
徒らに我れを誉むる者は喜ぶに足らず。
徒らに我れを毀る者は怒るに足らず。
誉めて当たる者は我が友なり。
宜しく勗めて以て其の実を求むべし。
毀りて当たる者は我が師なり。
宜しく敬して以て其の訓に従うべし。
やたらと自分を誉める者がいても、喜ぶほどのことではない。
やたらと自分をけなす者がいても怒るほどのことではない。
誉められて、それが的を射ているならば、その人は自分の友である。
しっかり努力して結果を出すようにしなければならない。
けなされて、それが的を射ているならば、その人は自分の師である。
慎んでその人の教えに従うべきである。
共感度:B
言志耋録283条より
身には老少有りて、心には老少なし。
気には老少有りて、理には老少なし。
須らく能く老少無きの心を執りて、
以て老少無きの理を体すべし。
人間の体には老化と若さの別が有っても心には老少は無い。
元気には老少の差があるが、道理には老少は無い。
だから老人だとか若者だということに捉われない心を持って、
老少の無い道理を体得すべきだ。
共感度:C / 引用先:南洲手抄言志録101カ条
言志耋録285条より
天道・人事は、皆漸を以て至る。
楽を未だ楽しからざる日に楽しみ、患を未だ患えざるの前に患うれば、則ち患免れるべく、楽全うすべし。
省みざるべけんや。
自然現象や社会の出来事は全て徐々に起こってくるものである。
それで楽しみが来る前に楽しみ、心配事が顕在化する前に用心しておけば、心配事は免れる事ができるし、楽しみは全うすることができる。
よく考えておくべきことだ。
共感度:C
言志耋録322条より
清忙は養を成す。
過閑は養に非ず。
気持ちよい忙しさは養生になる。
暇を持て余すようでは養生にはならない。
共感度:D
参考文献
言志四録 久須本文雄/全訳注 講談社
佐藤一斎一日一言 『言志四録』を読む 渡邉五郎三郎/監修 致知出版社
「言志四録」心の名言集 久須本文雄/訳 細川景一/編 講談社
佐藤一斎言志四録手抄 彫版 名言録集 徳増省允/著 いわむら一斎塾
再発見日本の哲学 佐藤一斎-克己の思想 栗原剛/著 講談社
人間は一生学ぶことができる 谷沢永一、渡部昇一/著 PHP研究所
言志四録抄録 渡邉五郎三郎/訳 世良田嵩/編 明徳出版社
佐藤一斎「言志四録」を読む 神渡良平/著 致知出版社
言志四録に学ぶ心の基礎力2 杉山巌海(孝男)/著 「100万人の心の緑化作戦」事務局
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